空の謳〜天野こずえ短編集２〜

ガンガンにて浪漫倶楽部の連載終了後、ステンシルにて「AQUA」連載開始までにガンガンに連載された

４つの短編をまとめた作品です。

〜私を　楽園から連れ出そうというのですか？〜

一億人に一人だけ生まれる、「癒しの声」を持つ優良種、セレナと金次第でどんな危険な仕事も

受ける運び屋カミーユが下界で繰り広げるひとときの交流と別れ、そして決意の物語。

「お願い、自分から長生きすることをあきらめないで」

「私の夢は　素敵なおばあさんになることです」

非情な運命を定められたセレナのまっすぐな言葉が響く、優しい物語。

〜実はお姉さんは　魔法がつかえちゃったりするのです

うって変わってこちらはちょっと変わった公務員（郵便局員）が主人公のコメディー。

北海道の片田舎で繰り広げられる町にたった一人の郵便局員、綾乃お姉さんと

地元の小学年生、空と涼子の３人は大の仲良し。しかし、そんな日々に変化が…。

綾乃お姉さんと空君は実はナチュラルの４話にゲスト出演したりしてます。

二人の後日談は「おひさま笑顔」（こちらも短編集）で少しだけ語られておりますが、

アニメ版と漫画版で思いが届いたり届かなかったりでどっちなんだと小一時間(ry

インターネット全盛の時代に手紙を使う事の意味、というのも一つのテーマになってます。

手紙は言葉以上に思いを伝えられる、というメッセージは、ARIA THE ANIMATIONの４話に出てきた

猫の手紙とか、ARIA本編の「郵便屋さん」に繋がっているテーマでしょう。後日談にちょこっと

出てきたシールまみれの空の手紙は言葉だけでは伝えられない思いを表しているのでしょうか。

どうでもいいけど綾乃お姉さんの改造制服は見事なまでに絶対領域標準装備でありますっ。

〜ドキドキしたんだ　素敵な声だなって思った

文化祭で出合った可愛いあの子は可愛い声のツンデレ娘。何このバカップル、と言いたく

なるようなベッタベタなラブコメです。またその子＝春夏は声優さんだっていうんだから

~~一発殴らせろ翔~~

ｹﾞﾌﾝｹﾞﾌﾝ

表表紙はネタの宝庫。猫コスの天野先生がバルーンになっているだけでなく看板には

ポエミー萩原の肖像画、１−Ａの展示発表は（アリアの全て（見たい））だったりとか。

〜さあ、行こう　地球（アース）が　迎え入れてくれる

天野先生の短編の中では１番の傑作だと思います。リアルで読んだ時はあのシーンで鳥肌が

止まらなかった。

時代設定的にはいちばんARIAの世界に近いかな。地球の資源を使い尽くした人類が次から次へと

人の住める惑星をテラフォーミングして、その星の鉱物を使い尽くして死の星にしてから

また次の星を求めていく、っていう宇宙規模の環境破壊が行われている世界。そんな中で

第５地球から新たな星へと向かう移民船の中、主人公虎也は昔の青い地球を知る

カステラという少女と出会う。コールドスリープからさめた虎也達を待っていた

残酷な真実。それを回避する方法とは…。

最後のどんでん返しはさすがに予想外だった。人が人を思う気持ち、優しさ。そんな

単純でありふれたメッセージが自然な気持ちで受け入れられる、いかにもARIAの作者

らしい素敵な話です。

この話に出てくるような宇宙規模の環境破壊は実際に遠い将来起こりうる可能性も

ある訳で。ARIAの世界が浮島など必要最小限なものを除いてアナログ全盛な

スローライフな世界なのも、この話から続く天野先生の環境へのメッセージだと思います。