銀魂-残された伏線を整理してみる
打ち切り必至だった序盤もどこへやら、連載も完全に軌道にのってきた漫画「銀魂」。基本的には1話完結のギャグ漫画なので気楽に見れるのですが、そんな漫画でもそれなりに全体のストーリーの中で消化しないといけない伏線が結構あると思うのです。そこで、ちょっと整理してみようかと。
注:原作ネタバレ含みます
まずは
- 松陽先生と攘夷組
紅桜編をはじめ、長編にてたびたび名前の登場する松陽先生。銀時、桂、高杉の恩師であり、詳細は出ていませんがおそらく既に故人。紅桜編での高杉の口ぶりから、攘夷戦争の際に天人への迎合を望む幕府によって謀殺された事がうかがえます。そして三人はそれを機に攘夷戦争に参加、そして高杉は先生を殺した国への怒りを消すことができず獣の道へ。銀さんも「全てを失った」というぐらいに仲間を天人との戦いで失い、桂もまた攘夷を忘れられずにいる。三人にとって代えがたい重要な存在であったと同時に、その死はまた人生を決定付けるほどの大事であった事もうかがえます。
そして、気になるのは銀時との関係。紅桜編での桂の口ぶりからすると、三人の中では、最も銀さんと繋がりが深い人物であったという事がうかがえます。有力なのは、「身内のいなかった銀時の親代わりであった」説。今後明らかにされるのでしょうか。
- 宇宙海賊「春雨」との因縁
序盤(二巻)にて、江戸で若者にヤバイ薬を売っていた宇宙海賊、春雨。宇宙中に広がるマフィアネットワークである事がその回の堕落の言葉からうかがえます。万事屋の仲間(新八、神楽)を守るためとはいえ、幹部である堕落を倒し、宇宙中の春雨から狙われる事になった万事屋(と桂)。紅桜編でも、高杉一派と組んだ春雨が、「件の侍(銀時と桂)の首を取るため」として大量の兵士を送り込んでいました。狙う理由としては、恨みよりもどっちかというと面子の問題っぽいですが、おそらく今後もなんらかの形で万事屋は春雨に狙われ続けるでしょう。
- 天道衆
幕府の上に位置し、将軍を傀儡として江戸の実権を握る天人で構成された集団。とっつぁん初登場の回で出てきていますね。今の所直接のかかわりはありませんが、やはり紅桜編で、万事屋、桂一派が高杉達と戦っているうちに、河上萬斎が春雨を天道衆とひきあわせています。春雨と万事屋の因縁を考えると、天道衆が江戸でなんらかのアクションを起こす際、春雨がそれに協力、そして見返りに銀時と桂の首を要求、という事は考えられます。前述の通りいまの所万事屋とのかかわりは薄く、どちらかというと天道衆からみで事が起こるならば、真撰組がらみのほうが可能性は高いかもしれない。
- 神楽の兄
星海坊主を殺し、親を超えて力を証明しようとした神楽の兄。そのまま行方知れずとなり、現在も生死は不明の模様です。一説には、「天道衆にいる」、「春雨の幹部になっている」とも言われています。ただこれに関しては、「神楽には兄がいて今は行方不明」という事実があるのみで、これがなんらかの伏線になるとは今の所作中では明示されていません。ですが、もし本筋と絡んでくるのならば、「戦う事のみに生きる夜兎の本能」と戦い、自分を変えようとしている神楽とのかかわりになってくるのではないかと思います。
夜兎の本能の象徴とも言える、おそらくは戦いのみに特化し、それだけを目的に生きる兄との対峙。そしてそれを超える事、あるいは神楽が兄の考え方を変える事が、神楽が夜兎の本能との戦いに勝った、という証明になるかもしれません。
- 高杉との因縁
おそらく漫画としてのクライマックス、そして絶対に消化しなくてはいけない伏線が高杉と銀時との決着になると思います。
個人的な考えとして、同じく全てを失った銀時と高杉の差、それは「守るべきもの」の有無ではないかと思います。大切なものを奪われ、からっぽになった二人。しかし、銀さんには、お登さん、万事屋、そして真撰組、後さっちゃんとか柳生の面々とか…自分とかかわりを持った「守るべきもの」が新しくできました。それが、からっぽだった銀さんにとって、今生きるための理由になっています。
しかし、対する高杉はそれが無い。
「俺はあぜ道に仲間が何人転がろうか知っちゃいねえ」
「俺はただ壊すだけだ。この腐った世界を」
このあたりの言葉を見て感じた事ですが、おそらく高杉にとって、真に仲間と言える存在はいないんじゃないかと思うのです。「江戸を壊しつくす」そのために必要な手駒、おそらく高杉は鬼兵隊の面々をその程度の認識を持ってしか見れていないのではないかと思います。ただひたすらに己の中の獣=破壊衝動と共に生きる、それが今の高杉ではないかと思います。
変えるには、必要なのはやはり銀さんと同じく「仲間」の存在ではないかと思います。そこを今後の長編、昔の同志であった桂や銀さんが変える事ができるかどうか、そこが高杉が救われるかどうかに繋がってくるのではないかと。
- まとめ
この中で必ず消化しないといけないと思われるのは5番目の高杉がらみの事だけだと思います。銀さんの行動原理自体が「守らないといけないのは江戸ではなく、自分とそのまわりの腐れ縁(と書いて大事な人、と読む)」なので、天道衆に関しては今の所は絶対に消化しないといけないというものではないし、春雨に関しても「面子にかけてちょこちょこ刺客を送ってくるけど、大きなアクションは起こさない」という程度で終わる可能性もあるし。
しかし、前の所でも述べたように
「天道衆が江戸を破壊しつくして天人のみの国に変えようとしている。そしてそれに春雨が協力し、見返りに銀さんと桂の首を要求、そして高杉一派ももちろんそれにかかわり、しかも春雨には神楽の兄がいた」
こうなれば大変です。ほとんどの伏線を消化してこれまでの登場人物を全て巻きこむレベルの一大バトル長編がものすごい長さで展開される可能性があります…。
後、松陽先生については過去編みたいなのでやる可能性が高いでしょうね。そのあたり出てくれば終わりも近いと推測されますが。
後考えられる可能性とすれば、「全伏線を消化せず、ある日いきなり打ち切りみたいに終わる」という可能性も。なんとなくそれでも許されそうな気もしますが…
とりあえず今の所は「星一つゲロまみれにして滅ぼす宇宙怪物との戦い」とかやってる所だし、短編も好調。いまのところ終わる気配は無いですがね。個人的にはシリアスシリアスであまり「銀魂らしくない」終わり方はしてほしくないなあ、と。やはり作風から、最後まで明るくダメダメな日常が続いていってほしいなあ、と思ってます。